症状と治療
治療の種類や特徴
転移乳がん1)とは
乳がんは、乳房内の乳腺にできる悪性の腫瘍です。乳腺は、母乳を作る「小葉」と、母乳の通り道である「乳管」でできています。乳がんの多くは、乳管の細胞ががん化して発生します。
乳がんは、主に、乳管や小葉の中にとどまっている「非浸潤がん」と乳管や小葉の外にまで広がっている「浸潤がん」に分けられます。浸潤がんでは、がん細胞が血管やリンパ管を通って骨や肺、肝臓などの他の部位に転移(遠隔転移)する可能性があることがわかっています。
乳がんの進行度合い(ステージ2))は、
- 乳がんの大きさ
- 脇の下のリンパ節への転移の有無
- 遠隔転移の有無
によって、0期~Ⅳ期に分類されます。
0期は非浸潤がん、Ⅰ期~Ⅳ期は浸潤がんであり、遠隔転移が確認された場合はⅣ期(ステージ4)となります。
この遠隔転移がある「転移性乳がん」、手術などの治療を行った後に見つかった(再発した)「再発乳がん」、また、「初発でⅣ期と診断された乳がん」、それらを含めて「転移・再発乳がん」と呼ぶことがあります。
治療の種類
治療は大きく分けて「薬物療法」、
「放射線療法」、
「手術」、
「緩和ケア」、「補完・代替療法」、
「臨床試験」と分類できます。
それぞれの特徴を
つかんでいきましょう。
転移乳がんの治療
ホルモン受容体
(ER / PgR)
陽性
陰性
HER2
陽性ア
陰性イ
陽性ウ
陰性エ
ア
- ホルモン療法
±分子標的療法 - 分子標的療法
±化学療法
イ
- ホルモン療法
±化学療法 - ホルモン療法
±分子標的療法 - PARP阻害薬 *1
ウ
- 分子標的療法
±化学療法
エ
- 化学療法
±分子標的療法 - PARP阻害楽 *1
-
免疫チェック
ポイント阻害薬
*2
*1 : BRCA1またはBRCA2遺伝子変異陽性の場合
*2 : PD-L1陽性の場合
治療の選択にあたっては、
これらのタイプ分類だけでなく、
再発のリスクなどさまざまな情報が
考慮されます。
どうして副作用があらわれてしまうの?
どうやって対処するの?
副作用について
薬物療法、放射線療法問わず、がん(細胞)
だけに効く治療というものはなく、
いずれの治療でも副作用を避けることは
難しいのが現状です。
また、あらわれる副作用は
治療法やお薬によってさまざまです。
体の調子が悪いからといって、かならずしも
副作用ではない場合もあります。
そのため、体調や効果と副作用のバランスをみながら
治療を進めていくことが大切になります。
では、どのように副作用と
付き合っていけばよいのでしょうか。
副作用対策は、あなたの日々の体調(体温、
排便など)や気になる症状などを記録する
ことから始まります。そして、記録した
情報は、必ず担当医や看護師などへ伝える
ようにしましょう。
その情報から、今まで気づかなかった
副作用に気づくこともあります。
そうすることで、あなた自身が日常生活で
できる対策や副作用の予防や症状軽減の
ための治療法(支持療法)について
担当医と話し合うことができるようになる
と考えられます。
質の高い生活をより長く送るためにも、
日々の生活で気になることがあれば、
どんなことでも躊躇せず、担当医や看護師などに話してみましょう。
アドバイス
気になる症状などがあれば、
一人で悩まずに担当医・看護師・
薬剤師に相談しましょう。
また、副作用には個人差があり、
薬剤によって副作用が出ない場合や
副作用の特徴は異なります。
ご自身が受けられる治療によって
起きる可能性がある具体的な副作用に
ついては
担当医・看護師・薬剤師に
確認してください。
治療の選択
詳しくはこちら
出典:
- 1)日本乳癌学会編: 乳腺腫瘍学 第4版 金原出版, 2022
- 2)日本乳癌学会編: 臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版 金原出版: 2, 2018
- 3)日本乳癌学会編: 乳腺腫瘍学 第4版 金原出版: 第1章 乳癌の基礎知識, 2022より作図